2021年04月22日

シュリンクレザーとは〜伝統の技術が生み出す美しい革〜

一言で革製品といっても、様々な革が挙げられます。どのような素材を使っているのか、どのような加工法が施されているのかによって様々な種類に分けられます。その中でも今回はシュリンクレザーについてその制作過程と様々な魅力について余すところなくお伝えいたします。

シュリンクレザーとは。

英語で「縮む(Shrink)」を意味するシュリンクの名を冠するシュリンクレザーは、鞣しの段階で革を特殊な薬品につけることで、革の表面を収縮させて独特のシボを出した加工を施した革のことです。
その独特の風合いから、近年ファンになる人が急増しています。

シュリンクレザーが作られるまで

シュリンクレザーは、型押し加工を施して風合いを作り上げる方法と薬品によって仕上げる方法の大きく分けて2通りの方法で作られます。
レザーのきめ細かい凹凸を型を押すことで加工する「型押しシュリンク」という技法は、比較的硬い質感に仕上がることが特徴です。均等に凹凸を施したいという時によく使われる手法で、この手法で作られたレザーは型押しシュリンク(エンボスレザー)とも呼ばれます。
製革工程の途中、革を濃いタンニン液に漬けると、銀面層と皮下層は繊維組織が違うため、銀面のみが収縮作用を起こします。これをシュリンク加工といい、革製品特有の傷やシワを目立ちにくくするという役割も。
最近はシュリンクレザー特有の柔らかい質感を重視することが多いようで、薬品を用いたシュリンク加工が主流です。

シュリンクレザーの特徴

シュリンクレザーの最大の特徴は、収縮剤を使って革を縮ませることで表現できる細かくちりめん状にギュッとと寄ったシワ(シボ目)です。このシボ目が、シュリンクレザーが支持されている理由の一つです。自然なシボ目によって、革全体が上品かつ柔らかい質感に仕上がります。使用している革が良質であればあるほど、シボ目も美しい品格あるものになります。

また、シュリンクレザーの特徴はもう一つあります。それは、シュリンクレザー傷の目立ちにくいということです。通常のレザーの場合、使っているうちに表面がスレや傷が目立つようになってしまいます。スレや傷は本革製品における醍醐味であるエイジング(経年変化)に関係してくる部分ではありますが。これは人によって好みが分かれてしまいます。しかし、シュリンクレザーの場合には、表面にシボ目が加工されているため、傷が目立ちにくく、長期間綺麗な状態を維持することができます。

注意が必要なのが「ソフトレザー」です。色や革の質感などは類似しているため、シュリンクレザーの製品と混同されてしまうことが多いです。
しかし、シュリンクレザーとソフトレザーはそれぞれに異なる特徴や性質をしています。
ソフトレザーは、自然な風合いと手触りの良い質感が特徴の革ですが、革表面に加工が施されていないません。
ソフトレザーは型押し加工や薬剤処理を行わず、鞣し加工のみ行っています。そのため、革本来の質感と淡く優しい色合いに仕上がりますが、加工がない分耐久性が低く傷が目立ちやすいというデメリットも存在します。
革は様々な種類があります。
革本来の質感をより楽しみたい場合にはソフトレザー、風合いや傷の目立ちにくさを重視したい場合にはシュリンクレザーを、といった形で好みに応じて選ぶと良いでしょう。

職人がおすすめするシュリンクレザーのお手入れ方法

革製品の醍醐味は「お手入れ」ではないでしょうか。長く使っていくという観点でも、日々のお手入れが非常に重要になってきます。
しっかりとお手入れをしてあげることで、革製品の魅力をさらに引き出すことができるようになります。

まずはホコリや汚れを落とす

外出の際に革製品使用している場合には、表面にホコリや汚れが付いてしまいます。革製品が汚れてしまった場合には、乾いた布を使って撫でるようにして拭き取り、表面の汚れを落としてあげることが重要です。この際、馬毛ブラシを使うのがオススメです。馬毛ブラシを使うことで、革の表面を痛めることなく革目を整える効果も期待できます。
また、布で拭いた時のように、隙間に埃や塵が溜まるようなこともありません。

皮革クリームでしっかりと保湿

革は乾燥に対して非常に弱いです。そのため、皮革専用クリームを使って定期的に栄養補給をしましょう。シュリンクレザーは傷に強いという特徴がありますが、乾燥によって特有の風合いが損われてしまう可能性もあります。
皮革クリームを少量取った後、専用のクロスを使って革全体に満遍なく塗っていくことが重要です。塗り過ぎ無いよう十分に注意しながら丁寧に塗り込んだ後、不要な布を使って乾拭きし、余分なクリームを拭き取りましょう。クリームの塗布後は陰干しをしたらシュリンクレザーのお手入れは完了です。

雨に備えて防水スプレーを吹きかけておくのがおすすめ

注意しなければならないのが、シュリンクレザーは水や湿気に弱いということです。
濡れたまま放って置くと色落ちやシミが発生してしまいます。出先の場合、すぐにケアすることも難しいため、防水スプレーを吹きかけて置くことがおすすめです。

30cm離した所からムラができないように防水スプレーを吹きかけましょう。一箇所に過剰に吹きかけてしまうとシミの原因になってしまうので注意が必要です。

行う前に目立たない箇所で試してから全体に吹きかけると良いでしょう。

合皮の場合はお手入れ不要

合皮に対して収縮加工(シュリンク加工)を施している場合には基本的にお手入れは不要です。合皮の場合には、皮革クリームなどを塗ってししまうとそれがシミや劣化の原因になってしまいます。

外出先から帰ってきたタイミングで、布などでホコリや汚れを軽く拭き取ってあげるだけで十分です。

本革のシュリンクレザーが引き起こす経年変化

シュリンクレザーは型押し加工や薬剤処理などの近代的な革技法によって作られている革です。
それゆえに、従来のベジタブルタンニンレザーやオイルレザーなどと比較すると経年変化(エイジング)が楽しみにくいという特徴があります。
収縮加工(シュリンク)にて革表面が凹凸のあるシボに覆われているため、経年変化が見られづらいのです。しかし、皮革製品のため経年変化もある程度は発生します。しっかりとお手入れを行うことでより高級感のある風合いへと昇華してくれるでしょう。

まとめ

いかがでしたか。
今回は、シュリンクレザーについて詳しくご紹介しました。
シボ革の独特の雰囲気によって演出される柔らかさと高級感はシュリンクレザーならではです。
本記事が、シュリンクレザーの魅力を知っていただく際のきっかけになれば幸いです。

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