2021年03月22日

アパレル業界の環境問題について考えてみた。問題解決のための取り組みとは?

近年こんなワードが話題になっています。
「アパレル業界が環境を破壊している」
環境問題は様々な視点で議論されており、アパレル業界が環境に与える影響も明らかになっています。そこで今回は、アパレル業界が抱える環境問題とアパレル業界の環境問題への取り組みについて取り上げます。

アパレル業界が環境汚染産業ランキングで2位に

国連貿易開発会議(UNCTAD)はアパレル業界を世界2位の汚染産業として指摘しました。アパレル業界は毎年、930億㎥と推計される水を使用し、石油300万バレルに相当するプラスチック素材を海洋に投棄しています。炭素排出量においてもアパレル業界は国際航空業界と海運業界を足したものよりも多い量を排出しているのです。

これらの報告を受け、国連はアパレル業界に持続可能性を高めるような商品製造と体制の改善を求めています。いま、アパレル業界全体が、サステイナブルなものづくりを求められているのではないでしょうか。

参照:https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/32952/

ファストファッションが招く環境問題~水質汚染と健康被害の解決策とは~

ファストファッションとは、最新の流行を取り入れ、生産スピードを早めたファッションを指します。消費者の求めるデザインのものを販売価格を抑えるために「大量生産」を行っていった結果、様々な問題を引き起こしました。現在では、ファストファッションによる環境問題を取り上げた論文も数多くあり、その影響はファッション業界以外にも波及しています。

ファストファッションが引き起こす様々な問題

ファストファッションでは、流行の服を安く売るためにコストを削減しています。比較的安く済むため、天然素材ではなく化学繊維が使用された服が大量に作られています。化学繊維はポリエステルやナイロンといった繊維状のプラスチックから作られます。

これらの化学繊維による水質汚染と健康被害は世界各地で報告されています。品質の低い化学繊維製の衣料品は洗濯のたびに細かい繊維となって下水へと流れ込みます。流失する繊維の量は毎年50万トンほどになります。それらの繊維は下水場で処理しきれずに海へと放出され、魚の体内に入り、食事を通して私たちの身体に入ってくる恐れがあるのです。

また、環境問題に止まらず、労働者の問題もあります。

生産コスト削減のために海外工場では、現地の労働者が劣悪な環境のなかで、最低賃金以下で働かされているという場合があります。2013年にバングラデシュの縫製工場の倒壊事故が発生し、1000人以上が犠牲になりました。従業員がビルの老朽化を発見し、地元警察が調査のために退去命令を出していました。しかし、工場の稼働には問題ないと主張したオーナーや工場のマネージャーによって、解雇を示唆された従業員たちは仕事に戻らざるを得なかったのです。その後、解雇を恐れて通常通り出勤した従業員たちは事故に巻き込まれてしまいました。

ファストファッションの安価な服の一部はこのような労働者の犠牲の上に成り立っているのです。

参照:https://eleminist.com/article/783

ファストファッションが引き起こす問題の解決策

アパレル企業にもやるべきことがあります。まずは、過剰生産からの脱却が必要です。
必要なもの、必要な量生産することが重要になってきます。
消費者から永く使ってもらうために、良品質の商品が必要になります。そのため、現在アパレル業界は、高い技術を持った職人の育成や十分な労働環境を実現することが求められているのではないでしょうか。

アパレル業界が抱える大量のゴミ問題

毎年アパレル業界から廃棄されるゴミの量は9200万トン。2014年の衣料品の生産量は2000年の2倍になっています。これは、生産から廃棄までのスピードが加速していることが要因の一つであり、アパレル業界の抱える問題を浮き彫りにしています。

参照:https://www.commonobjective.co/article/pulse-of-the-fashion-industry-2017

服が短期間で消費されやすくなったのにはいくつかの理由があります。

・服の低価格化が進み、服を新調することが容易になった
・ファストファッションの導入による生産体系の変化
・服の品質低下による再利用率の低下

これらの変化により衣料品は今までよりも頻繁に捨てられることになりました。日本における衣料品の再利用率は約26%です。7割以上の衣料品は、再利用されることなく埋立地を圧迫しています。

Tシャツ一枚の製造に3年分の水が使用される

衣料品を作るのには、大量の水が必要です。Tシャツ一枚を作るのに2720リットルの水が必要といわれています。これは成人男性1人が飲む飲料水の3年分の量に相当します。栽培地にもよりますが、1キロの綿を作成するのに約2万リットルの水が必要であるため、このような数字になっているのです。アパレル業界全体で消費される水の量は930億㎥と天文学的数字になっています。これだけの量の水が消費されている一方、水不足にあえぐ地域もあります。

参照:https://www.worldwildlife.org/stories/the-impact-of-a-cotton-t-shirt

アパレル企業の環境問題への取り組み

現状を受けて、アパレル企業も様々な視点から環境問題への取り組みを行っています。

二酸化炭素削減に向けた動き「ファッション協定」

2019年8月にはマクロン大統領の働きかけにより「ファッション協定(FASHION ACT)」が発足しました。60以上の世界中の有名アパレル企業が参加し、2050年までの二酸化炭素排出ゼロを目標として掲げました。在庫や売れ残りの廃棄ゼロを目指した世界初の法律も制定されました。

参照:https://www.fashionsnap.com/article/2019-08-27/fashionpact-g7/

環境にやさしい素材の使用

化学繊維の製品から天然素材や再生素材への移行が求められています。アディダスは2021年の夏にリサイクル素材で作ったシューズを発売予定です。接着剤未使用で1種類の素材から作られているため、使用後に溶かして再利用することができます。環境にやさしい素材に関心を持つことで、捨てられる服を少しでも減らせるかもしれません。

参照:https://newswitch.jp/p/24739

「透明性の誓約」による工場の可視化

世界の主要17ブランドでは、「透明性の誓約」の遵守を表明しており、他のアパレル企業もこれに続くことが期待されています。
「透明性の誓約」は、企製造工場の開示をしなければならないという誓約です。
各企業は、工場に関する情報をスプレッドシート、または他の検索可能なフォーマットで公表することになるため、企業の透明性を高めることが可能になります。
これによって、企業は将来的に起こりうる様々な悪影響を回避することができるため、他のアパレル企業の続くことが期待されています。

地球環境を守りたい~Smart Peopleの取り組み~

SMART PEOPLE(スマートピープル)は、革製品を中心に扱うことで永く愛用することができます。全国の系列店で修理を行うことができ、汚れたり壊れたりしても繰り返し使うことができます。
また、使われている革は食肉加工の際の副産物を使用しています。動物素材を余すことなく利用した「世界最古のリサイクル」と言われています。更にインドのコルカタ地方をはじめ、途上国の縫製工場で生産することで、安定した雇用を生み出し、高度な技術力を養い維持します。

まとめ

衣食住の衣を満たすアパレル業界ですが、アパレル業界が行う生産活動による環境への影響は多大なものになります。サステイナブルな製品を作っていくことが、今後のアパレル業界にも良い影響をもたらすのではないでしょうか。
消費者の方も環境問題を知り、一着の服を永く大切に使うことが大切になってきます。
”ものを大事に使う”という当たり前のことに、今一度目を向けてみるのもいいかもしれません。

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