〜服の廃棄が起こす負の連鎖〜「永く使う」ってなんだろう。
あなたは同じ服を何年間着られますか?流行から外れたものは、綺麗な状態でも着づらいかもしれません。流行の移り変わるスピードはどんどんと速くなり、捨てられる服は増えてきています。
そこで今回は、ファッション業界が今向かい合うべき服の廃棄問題について様々な視点から解説します。
ファッション業界が今向き合うべき「服の廃棄」問題
現在、ファッション業界が直面している壁の1つが「服の廃棄」問題。「服の廃棄」問題の最大の特徴は、未使用の服も廃棄されてしまうという点です。現在、大量生産によって生み出されている服の中には、一度も使われていないのに捨てられてしまっているものも多くあるのです。
2015年の国連サミットで採択されたSDGsの達成が叫ばれており、それに伴って、「服の廃棄」問題は多くの人の関心を集めています。
データで見る 世界の「衣服廃棄量」のイマ
衣料品の年間供給量は約29億点にも上ります。一方、年間消費量は約14億点。差分の15億点は消費者の手に渡らず廃棄処分になっているのです。
在庫を保管するには多大なコストがかかります。売れ残ってしまった際には、処分せざるを得ないという場合が多々あります。
また、一般的にファッション業界は、トレンドの変化が早くシーズンによって売れる服が変わります。そのため、「前のシーズンのものを在庫として確保しておいて来年に販売を……」というのはなかなか難しいのです。とはいえ、「そのシーズン中に値段を大幅に落として販売する」というのはブランドの価値を大きく下げるため、安易な安売りが出来ず、在庫を抱えてしまいます。
大量生産・大量消費・大量廃棄の背景
ファッション業界における「大量生産」「大量消費」「大量廃棄」に関する問題は、最近テレビや新聞などでもよく目にします。
この問題の背景には近年の「プチプラブーム」の影が。現在、ファストファッションブランドでは、最先端のデザインを低価格で手に入れることができます。プチプラとは「プチプライス」、すなわち低価格を指す用語。
これによって、ファッションアイテムの価格競争が激化していきました。様々な企業がファッションアイテムを低価格に抑えるために、大量生産を行いました。
また、一般的にアパレルブランドでは定価で売れると予測した数の2倍を生産するといわれています。店舗に並べられる服は常に一定数を保っていないと店としての体裁が成り立たないため、見込み以上の在庫が必要になるのです。
廃棄問題への取り組み
ファッション業界で廃棄問題が取り沙汰されている現在では、廃棄問題に対する取り組みもあります。
インターネットの普及によって多くのことが「視える」時代に。世界の様々な状況が手軽に手に入るようになりました。消費者側もブランドの裏側を覗けるようになったため、廃棄問題についても明るみに出るようになりました。
また、SDGsの採択に伴い、廃棄処分による環境問題も話題に。服を処分する際に発生するCO₂によって、環境汚染が発生しており、これらを解決するサスティナブルなものづくりが課題になっています。
こうした背景の中、衣服の廃棄問題に対する取り組みが増えてきています。
「使える服を捨てるのはもったいない!」再販売により廃棄を減らす取り組み
一度も着られることなく捨てられてしまう新品の服を再販売するという取り組みが進められています。ブランドタグを付け替えて、新しい名前、新しい価格で新しい人へ服を届ける「Rename」という取り組みが行われています。
ブランドタグを外すことで、ブランド毀損を起こさず、低価格で再販売することを可能にしました。「Rename」では、定価の3割ほどの値段での再販売を実現しています。この取り組みは消費者とブランド両方にメリットがあります。
消費者はブランドイメージに左右されずに低価格で服を買うことができ、ブランド側はブランド価値を保ったまま廃棄ロスを減らすことができます。また、本来廃棄される服を再販するため、廃棄を減らすことができます。
発展途上国の子供たちへ。服を寄付する取り組み
着なくなった服を捨てるのではなく、発展途上国へと寄付するという取り組みが欧米諸国を中心に広がっています。例えば、アメリカではチャリティ団体が街中に古着の回収ボックスを設置し、古着の寄付を募っています。
また、イギリス発祥のサルベーションアーミーというチャリティ団体に古着を寄付すると、税金の控除を受けられる証明書を手に入れることができます。
寄付される古着の数は年々多くなっており、服の廃棄問題への取り組みが注目を集めてきていることが分かります。
送られた古着が多くの人の手に渡り、生活を支えている一方、このような古着の寄付は様々な問題も引き起こしています。寄付量が服の回収業者のキャパシティを大きく超えており、再利用できない服はゴミとして処分されることになります。また、大量の服を輸送する際に出るCO₂の量も軽視できるものではありません。
送られる古着は基本的に供給側の都合で決まるため、現地のニーズに合わないような服が届いてしまう場合があります。サイズ感の違いや、現地では到底着られないようなデザインの服が届いてしまう場合があります。例えば、紛争地域に迷彩柄の服が送られ、それを着ている人が軍人に見えてしまうというような問題があります。
「永く使う」ことのできるプロダクトが創り出すサスティナブルな社会
サスティナブルな社会を実現するためには、永く使うことのできる商品が必要です。生産と消費のスピードが上がっていく中で、流行に左右されない商品を生み出すことで、モノを大切に使っていくという意識を高めるきっかけになるかもしれません。
まとめ
様々な取り組みが続けられていますが、依然として服の廃棄量は増え続けています。服の廃棄を減らすためには、生産者と消費者の両方が意識を変える必要があります。サスティナブルな暮らしを実現するためにも、なんらかの行動をおこしてみてはいかがでしょうか。
サスティナブルな商品を選んで購入したり、企業の社会貢献運動について調べたり、という小さなアクションや意識改革が大きなムーブメントにつながることもあるかもしれません。
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